建設工事の見積送付について電磁的方法の明確化

建設業に特化した東京(新宿区)の行政書士事務所オータ事務所 でコンサルタントの一員として、クライアントから寄せられる建設業法や建設業許可に関する相談対応を行っている清水です。

本年、2021年5月19日に公布された「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」によって、民間手続における書面交付等について電磁的方法により行うことなどを可能とする見直しが行われました。本法の施行(2021年9月1日)にともなって、建設業法の規定も整備され建設工事の見積送付について電磁的方法が明確化されます。建設業法及び関連する政省令も9月1日となります。

改正前の建設業法の見積の規定では請負契約とは異なり「書面」でとはされていませんでしたので、見積を電子メールで送ったりクラウド上からダウンロードすることも可能でした。つまり今般の改正の趣旨は建設工事の見積送付について、電磁的方法が可能であることを明確化して、その方法等を整備することにあります。

(新設)法第20条の3のポイント
・法令の規定に沿って見積を電磁的方法によって送付した場合は、見積書を交付したものとみなす。
・見積を電磁的方法によって送付する場合には、あらかじめ注文者の承諾が必要である。
・承諾は書面又は電子情報処理組織を使用する方法が認められる。
・見積送付や承諾における電磁的方法は建設業法施行規則で定める。

注文者の承諾の方法や電磁的方法による見積送付の方法は建設業法施行規則によって定めることとされていて、2021年9月1日より施行されます。先ずはほぼ条文のままですが、その内容をご紹介いたします。一般的に行われている、見積書ファイルをメールに添付して送信する方法も認められる内容です。

情報通信の技術を利用する方法
① 建設業者の使用に係る電子計算機と建設工事の注文者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて書面に記載すべき事項(以下この条において「記載事項」という。 ) を送信し、 建設工事の注文者の使用に係る電子計算機に備えられた受信者ファイル (専ら注文者の用に供されるファイルをいう。以下この条において同じ。 ) に記録する方法
② 建設業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された記載事項を電気通信回線を通じて建設工事の注文者の閲覧に供し、建設工事の注文者の使用に係る電子計算機に備えられた当該建設工事の注文者の受信者ファイルに当該記載事項を記録する方法
③ 建設業者の使用に係る電子計算機に備えられた受信者ファイルに記録された記載事項を電気通信回線を通じて建設工事の注文者の閲覧に供する方法
④ 磁気ディスク等をもつて調製するファイルに記載事項を記録したものを交付する方法

情報通信の技術を利用する方法の基準
A 建設工事の注文者が受信者ファイルへの記録を出力することにより書面を作成できるものであること。
B ②の方法にあっては、記載事項を建設業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する旨又は記録した旨を建設工事の注文者に対し通知するものであること。ただし、建設工事の注文者が当該記載事項を閲覧していたことを確認したときはこの限りではない。
C ③の方法にあつては、記載事項を建設業者の使用に係る電子計算機に備えられた受信者ファイルに記録する旨又は記録した旨を建設工事の注文者に対し通知するものであること。ただし、建設工事の注文者が当該記載事項を閲覧していたことを確認したときはこの限りでない。

情報通信の技術を利用した承諾の取得
・建設工事の注文者の使用に係る電子計算機から電気通信回線を通じて建設業者の使用に係る電子計算機に承諾又は申出をする旨を送信し、当該電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
・建設業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された電磁的方法の種類及び内容を電気通信回線を通じて建設工事の注文者の閲覧に供し、当該電子計算機に備えられたファイルに承諾等をする旨を記録する方法
・磁気ディスク等をもつて調製するファイルに承諾等をする旨を記録したものを交付する方法

見積ファイルをメール添付にて送信することはこれまでと同様に行えますが、そのことについて注文者の承諾を得ている建設業者は少ないかと思います。例えば、基本契約書の締結にあたっては、見積書の送付について電磁的方法を取ることの承諾をあらかじめ行うことは1つの対応例かと思います。

さて、本日の解説はここまでとしておきます。グループの建設産業活性化センターが主催するセミナーでは、8月19日(木)・8月25日(水)・8月27日(金)・9月3日(金)・9月8日(水)の全5回にわたって「基礎から学ぶ!建設業法解説セミナー」を開催致します。私も講師を担当いたしますので、本日のテーマについて深堀して解説できればと思います。

シニアコンサルタント 清水 茜作

行政書士
2012年 オータ事務所株式会社 入社
入社よりオータ事務所営業部で建設業許可の各種申請、経営事項審査などに携わり、17年は年間約450社の手続きを担当する。培ったノウハウをもとに18年より同社の広報担当としても、建設業者に向けた最新情報の発信を行っている。また、グループの建設産業活性化センターが主催するセミナーでは、コンテンツ制作から講演までを一貫して手がけ、建設業者のコンプライアンス・経営力向上を積極的に働きかけている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA