国土交通省 実務経験の不備について今後の対応を公表

建設業に特化した東京(新宿区)の行政書士事務所オータ事務所 でコンサルタントの一員として、クライアントから寄せられる建設業法や建設業許可に関する相談対応を行っている清水です。

昨年2019年から建設業者に所属する技術職員が技術検定試験における所定の実務経験要件を充足していない状況で施工管理技士の資格を取得していた問題が相次いでいますが、2020年4月17日国土交通省は1社より提出された報告書を受け、これに対する国土交通省の対応を取りまとめましたのでご紹介いたします。国土交通省は合格者の合格取消及び一定期間の受験禁止、同社に対しては再発防止強く求め、監督処分を行うかまえです。さらに次に掲げる方針も打ち出されました。

建設業法に基づく立入検査の実施
2020年度の「建設業法令遵守推進本部活動方針」において、今後、技術検定に係る実務経験の証明についても、必要に応じて建設業法に基づく立入検査の対象とするよう記載する予定としています。
事案の周知及び注意喚起
建設業団体に対して、本事案を周知し、技術検定の受検に際しては、人事記録や工事記録等を用いて実務経験証明書を確認するなど、チェック体制を強化するよう注意喚起を行うとともに、今後、必要に応じて建設業法に基づく立入検査の対象とすることについて周知します。
有識者委員会による再発防止対策の検討
今後、このような事態を防止するため、虚偽申請の抑止、審査方法の改善等の観点から、有識者委員会を開催し、再発防止策を検討するとし、委員会の開催については改めて公表する予定としています。

そもそも技術検定の受験資格には一定年数以上の実務経験が求められますが、ある施工管理技士の受検において実務経験とした期間は他の施工管理技士の受検における実務経験とする期間として重複して数えることはできないとしていること(重複禁止要件)や、電気工事施工管理技士の実務経験については土木工事や建築工事で請け負った工事のうち下請に出した電気工事は、電気工事施工管理の実務経験として数えることができないこと(「電気工事下請除外要件」)がその要件とされています。本事案ではこれらの禁止や除外要件を満たしていなかったことが不備の内容とされています。

同社の報告書によると上記のような不備の原因は、重複禁止要件や除外要件などを受験の手引をチェックする体制にはなく、受検者に対して周知・注意喚起等のフォローが行われていなかったこととされています。さらには実務経験の証明に必要な情報管理体制が整っておらず、受検者の記憶に基づき記載された実務経験証明書が承認されていたとされています。外部調査委員会が実務経験不備者に対して行ったヒアリングでは、重複禁止要件と電気工事下請除外要件を知っていた者が約20%しかいなかったこと、実務経験要件承認者においてはさらに理解度が低かったことが指摘されています。そして、再発防止に向けては受検者及び実務経験要件承認者のいずれもが、実務経験を一目で確認できるように、実務経験を可視化するシステムを構築し、実務経験の証明に必要な情報管理体制を構築するべきであるとしています。

不備のある実務経験に基づいて技術検定に合格した者を監理技術者や主任技術者として置き、営業所の専任技術者として届出ている場合は建設業法違反にあたる場合があるので、建設業者には今一度技術者の実務経験に関する管理体制を見直すことをお勧めいたします。

オータ事務所は建設業許可に特化した行政書士事務所として多くの申請件数から培ったノウハウを活かして、建設企業の建設業法令遵守を支援しております。建設業法令遵守サポートサービスにご契約いただいく会員企業から寄せられるご質問等には、ご担当者の方が上司や経営陣に対してより説得力のある説明ができるよう、根拠条文を必ずご紹介するようにしております。いきなり契約には躊躇してしまうという企業には、毎月建設業法のテーマごとに相談会もリーズナブルな価格で実施しておりますので、こちらもご利用をご検討ください。ご来社いただくことなく、テレビ会議システムを活用してご相談に対応することも可能です。

シニアコンサルタント 清水 茜作

行政書士有資格者
2012年 オータ事務所株式会社 入社
入社よりオータ事務所営業部で建設業許可の各種申請、経営事項審査などに携わり、17年は年間約450社の手続きを担当する。培ったノウハウをもとに18年より同社の広報担当としても、建設業者に向けた最新情報の発信を行っている。また、グループの建設産業活性化センターが主催するセミナーでは、コンテンツ制作や講演を通して建設業者のコンプライアンス・経営力向上を積極的に働きかけている。

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