下請取引調査をきっかけにコンプライアンス体制の見直しを

こんにちは。建設業に特化した東京の行政書士事務所 オータ事務所でコンサルタントの一員として、クライアントから寄せられる相談対応を行っている清水です。

国土交通省及び中小企業庁は7月10日、全国の建設業者 14,000業者に対して下請取引の実態を把握するために調査票の送付を実施しました。毎年7月に実施されている本調査ですが、今年の報告期限は8月16日と夏季休暇と重なる企業も多いと思われますので、報告漏れのないよう注意が必要です。

調査内容は、元請負人による下請負人へのしわ寄せの状況等に加えて、建設業法令遵守推進本部が2019年度立入検査の周知事項に掲げる下請代金の支払手段、消費税の適正な転嫁等についても調査が行われます。

調査の結果、建設業法令違反行為等を行っている建設業者に対して指導票を送付し、是正措置を講ずるよう指導が行われます。未回答業者や建設業法令違反等があり特に必要がある場合には、許可行政庁による立入検査等の端緒情報として活用するとされており、前段の法令遵守推進本部も未回答または不適正回答の多い建設企業、不正行為等を繰り返し行っているおそれのある建設企業を中心に、立入検査を実施するとしています。

この調査によってはじめて建設業法令に規定される下請取引のルールを知ったという建設業者の声を聞くこともあります。調査対象となっていない建設業者も、「当社の回答はどうなるか?」の視点で調査票を確認すると社内のコンプライアンス体制の見直しにつながります。それでは、調査票にある下請代金の支払手段についての設問を見てみましょう。

下請負人に対する支払手段は次のうちどれですか。該当する主な番号1つに○印を記入して下さい。

1 全額現金で支払っている
2 少なくとも労務費相当分は現金で支払い、残りは手形で支払っている
3 労務費相当分に満たない額を現金で支払い、残りは手形で支払っている
4 自社で決めている割合で現金と手形を併用しており、労務費相当分を現金で支払っているかは把握していない
5 全額手形で支払っている
6 ファクタリング方式を活用している

回答は何番になりましたか?実は、この設問は今後の建設業の法令遵守において非常に重要な内容となります。請負代金の支払いはできる限り現金払いとし、手形等の手段を併用する場合であっても、少なくとも労務費相当分については現金払いとしなくてはならないとされています。このルールは、これまでは「建設産業における生産システム合理化指針」に基づいて指導されてきましたが、改正後の建設業法第24条の3第2項では、同様の内容が配慮義務規定に留められたものの法律に規定されることとなりました。下請企業の技能労働者の法定福利費を含む毎月の給与が滞りなく支払われることを目的とした規定で、したがって本設問のより適切な回答は1もしくは2となります。そして、今後は適切な支払い手段について、より一層の周知強化が予想されます。

先程も申し上げましたが、下請取引等実態調査の設問内容を理解することは、建設業法上の下請取引に関するルールが守られているか体制チェックの良いきっかけとなります。クライアントからも調査票についてお問合わせをいただくことが多いのですが、その際にはクライアントの理解度に応じて調査票にある設問の趣旨と法令遵守のポイント、社内基準の見直しをご提案するサービスをご紹介しております。ご興味のある方は、お気軽にお問合せください。

 

コンサルタント 清水 茜作

行政書士有資格者
2012年 オータ事務所株式会社 入社
入社よりオータ事務所営業部で建設業許可の各種申請、経営事項審査などに携わり、17年は年間約450社の手続きを担当する。培ったノウハウをもとに18年より同社の広報担当としても、建設業者に向けた最新情報の発信を行っている。また、グループの建設産業活性化センターが主催するセミナーでは、コンテンツ制作や講演を通して建設業者のコンプライアンス・経営力向上を積極的に働きかけている。

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