建設業法の改正 専門工事一括管理施工制度と法令遵守のポイント

こんにちは。建設業に特化した行政書士事務所 オータ事務所でコンサルタントの一員として、クライアントから寄せられる相談対応を行っている清水です。

6月12日に「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」が公布され、コンプライアンス意識の高いクライアントからは改正法の内容について多くお問合せをいただいております。改正法の施行期日は、公布の日から起算して1年6カ月を超えない範囲内において政令で定める日とされていて、2020年の秋頃の施行が見込まれています。一見すると準備時間が十分にあるように見えますが、建設業にたずさわる従業員や協力会社に周知することは容易ではありません。政令や省令が定まらない段階ではありますが問合わせの多い改正内容について、継続してお知らせしてまいります。

さて、本改正の主要な目的は、建設産業にとっての喫緊の課題である働き方改革の推進であり、これの実現には建設現場における生産性向上が欠かせません。建設業法で定める技術者についても、生産性向上を目的とした合理化に関する規定が新たに追加されています。

 

「専門工事一括管理施工制度」とは?

建設業法第26条第1項では「建設業者は(略)建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(略)を置かなければならない」として、建設業者は許可を受けた業種について軽微な建設工事を含めて全ての建設現場に主任技術者等を配置する必要があります。

この主任技術者等の配置義務を合理化する制度として、改正法第26条の3第1項において特定専門工事の元請負人の主任技術者が、下請負人の行うべき職務を行うこととした場合、当該下請負人は主任技術者を置くことを要しないとするものです。

この専門工事一括管理施工制度は、現状建設現場で多く見られる直用の技能労働者不足による数次の重層下請構造となることで、下請業者間の主任技術者同士が実質的には職務が重複しているため、ここに生産性向上につながる改善事項があるとの議論から生まれた制度です。では、図解でこの制度を理解していきましょう。

 

図解
専門工事一括管理施工制度

 

制度利用の重要ポイント
① 元請負人の主任技術者が専任で配置されている。
② 主任技術者を置かない下請負人は再下請負をすることができない。
(主任技術者を置いた下請負人は再下請負ができる。)
③ 元請負人が制度利用によって締結する下請契約の請負代金の合計額が政令で定める金額未満である。
(主任技術者に専任義務を課す基準額が3,500万円であることをふまえて検討されます。)

下請負人が再下請負禁止の規定に違反した場合は、監督処分事由に該当します。

 

特定専門工事とは?
・土木一式工事または建築一式工事以外の建設工事
・施工技術が画一的で、かつ、その施工の技術上の管理の効率化を図る必要があるものとして政令で定めるもの

上記をふまえて国土交通省は「鉄筋工事」「型枠工事」を指定することを検討中

 

制度利用のその他ルール
・元請負人と下請負人は書面による合意を図る。(工事内容、主任技術者氏名、その他省令で定める事項)
・元請負人が発注者から直接請負った場合は、下請契約の請負代金の額が4,000万円未満である。
・合意前にあらかじめ元請負人が注文者の書面による承諾を得る。
・主任技術者は、特定専門工事と同一種類の建設工事に関し1年以上の指導監督的実務経験を有している。

 


 

元請負人は自社施工分を超える業務量に対応しやすくなり、技術者が不足する下請負人には受注機会の創出につながります。同時に不要な重層下請構造の改善に寄与することとなります。ただし、制度利用にあたっても、また元請企業の立場で承諾を行うにあたっても遵守すべきルールを正しく理解することが重要です。当然、施工体制台帳や施行体系図の作成掲示にも影響のある内容で、この制度において専任で置かれる主任技術者の指導監督的実務経験の確認をプロセスに組込むこと等の課題が想定されます。逆説的には今後益々施工体制台帳の適切かつ積極的な活用が求められることとなります。

冒頭の話しに戻りますが、改正建設業法について建設業にたずさわる従業員の方や協力会社に周知するために何をすべきかお悩みの方も多いかと思います。建設業に特化した東京の行政書士事務所を中核に置くオータ事務所グループは、建設業を営む企業に出向いて建設業法令遵守について講義を行う出張セミナーサービスを提供しております。現在、建設業法の改正を受けて4月と5月に2度開催してご好評をいただきました『建設業法の改正条文分析セミナー』(外部サイトにリンクします。)についても出張サービスを実施しております。ご希望の時間、参加人数、テストの実施等、様々なリクエストにも対応しておりますので、改正法の周知でお悩みの方はぜひお問合せください。

 

コンサルタント 清水 茜作

行政書士有資格者
2012年 オータ事務所株式会社 入社
入社よりオータ事務所営業部で建設業許可の各種申請、経営事項審査などに携わり、17年は年間約450社の手続きを担当する。培ったノウハウをもとに18年より同社の広報担当としても、建設業者に向けた最新情報の発信を行っている。また、グループの建設産業活性化センターが主催するセミナーでは、コンテンツ制作と講師としての講演を通して建設業者のコンプライアンス・経営力向上を積極的に働きかけている。

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