建設業に特化した東京(新宿区)の行政書士事務所オータ事務所 でコンサルタントの一員として、クライアントから寄せられる建設業法や建設業許可に関する相談対応を行っている清水です。
国土交通省は2021年10月15日に中央建設業審議会総会を開催し、経営事項審査の改正について審議が行われ、その方向性が示されました。今後、検討が進められる改正内容をご紹介します。
経営事項審査の改正の方向性
建設業における以下の事項を推進するために、これらに向けた建設企業の努力を適正に評価、後押しすることがその方向性となります。
①担い手の育成・確保
②災害対応力の強化
③環境への配慮
①担い手の育成・確保
公共工事品確法第8条第3項の努力義務の内、下請負人に使用される者の労働条件の改善が元請企業の努力義務になっている一方、経営事項審査においては特段の加点等が措置されていない現状をふまえて、建設キャリアアップシステム(CCUS)を現場で導入している元請企業を経営事項審査で評価することを検討することが示されました。CCUSを導入している元請企業は、自らの負担(現場利用料等)により、技能者の労働条件の改善に相応の役割を果たしていると考えられるためです。ワークライフバランスの観点からは、その取組として「くるみん認定」「えるぼし認定」「ユースエール認定」等を受けている企業を評価することも検討されます。
②災害対応力の強化
地域防災の観点から、災害時の復旧対応に使用され、また定期検査により保有・稼働確認ができる代表的な建設機械の保有状況を加点評価しています。現在は、ショベル系掘削機、トラクターショベル、ブルドーザー、移動式クレーン(つり上げ荷重3トン以上)、大型ダンプ、モーターグレーダーの6種類が認められていますが、柱車やロードローラー等、実際の災害対応において活躍しているものの、経営事項審査上は加点対象となっていない建設機械が存在するとの声が上がっています。建設業者団体へのアンケート等により実態を把握し、加点対象の拡大が検討される見込みです。
③環境への配慮
現在は、環境マネジメントシステムの認証であるISO14001の取得状況を加点評価していますが、経営事項審査を受審している建設企業のうち、中小規模の建設業者においてISO14001を取得している割合は小さいです。脱炭素に向けた動きが加速する中、中小・零細規模の建設企業においても、脱炭素を含めて、環境問題への取組が改めて求められています。例えば、各都道府県の競争参加資格審査では、中小企業でも取得が容易な環境マネジメントシステムに関する認証である、「エコアクション21」を加点する動きが広がっています。この「エコアクション21」を加点対象とすることが検討事項にとして挙げられています。
その他(監理技術者講習受講者の経審上の加点関係)
2021年1月1日より、監理技術者講習の有効期間が改正され講習受講の翌年1月1日から5年間とされた一方、経審の審査基準は変更されていない(審査基準日以前5年間での受講が必要)ため、現場に配置可能な期間と、経審上加点可能な期間にズレが生じている状況があります。専任の監理技術者として現場に配置可能な期間は、もれなく経営事項審査においても加点可能となるよう措置することが検討されています。
本会議での委員からの意見等をふまえて、さらに検討を行い、次回の中央建設業審議会で改正案が審議される予定となっております。続報は再度、こちらのコラムでご紹介いたします。
さて、本日の解説はここまでとしておきます。グループの建設産業活性化センターは、2021年11月18日(木)に前回の好評にお応えして「基礎から学ぶ!建設業法解説セミナー」をリピート開催いたします。私も講師を担当いたしますので、読者の方はぜひ参加ください。