建設業法の改正 経営業務管理責任者の規制合理化検討案

建設業法の改正法が2019年6月12日に公布され、主要な改正の施行期日も2020年10月1日に決定されました。改正建設業法では建設業が抱える課題に対する対応として、様々な規制の合理化と建設業者等への新たな責務が規定されましたが、中でも1番注目度が高いのが建設業許可の基準「経営業務の管理責任者に関する規制の合理化」です。なぜ注目されるのか?それは、経営業務の管理責任者は建設業者の役員という人的経営資源に多大なる影響を及ぼすため、また建設業の継続という観点からも関心が高いテーマとなっています。

そもそも経営業務の管理責任者は、建設業が単品受注生産で工事ごとの資金調達が必要であること、資材購入や技術者配置、長期瑕疵担保責任を負うこと等、他の産業と異なる経営能力が必要であることから設けられました。しかしながら、現代においては次の点が問題となっています。

・中小企業や個人事業主等において経営層の高齢化が進み、事業承継の障害となっている。
・建設業の業態の多様化し、他産業と兼業する建設企業が増えている。
・申請者、許可行政庁の双方にとって経験の証明書類の作成、確認が負担である。

そこで、今回の法改正によって建設業法の条文からは経営業務の管理責任者を削除し、「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。」(改正建設業法第7条第一号)という新たな許可基準が設けられました。
(注:新たな許可基準の施行期日は2020年10月1日です。)

具体的な基準については国土交通省令で定められることとなりますが、改正の方向性はこれまで役員個人の経営経験によってその能力を担保していましたが、今後は組織の中で経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有することを求めるとしています。では、国土交通省が検討する新たな基準の具体的内容を確認しましょう。

① 建設業の経営業務の管理を担当する常勤役員として(1)~(3)のいずれかの者を配置

(1)建設業の経営に関する経験が5年以上ある(=従来の経営業務の管理責任者)
<同一業種>・役員(令3条使用人)5年 ・執行役員5年 ・補佐経験6年
<他業種>・ 役員(令3条使用人)6年 ・執行役員6年

(2)建設業の相応の管理職経験が5年以上ある <経験(役職)の拡大>

(3)建設業以外の業種の役員経験が5年以上ある <対象業種の拡大>

(2)もしくは(3)の該当者を常勤役員として置いた場合・・・建設業の経営業務を補佐してきた経験を有する者等を役員の補助者として相応の地位に配置する

② 適切な社会保険に加入していること
建設業者が義務的に加入すべき「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」に加入していること

建設業法施行規則改正案の内容は明らかになっていませんので、今後の経営方針や戦略について具体的プランを立てることは現状難しいですが、新たな基準の検討案をふまえると例えば、将来の役員候補には建設業の相応の管理職経験として認められるポジションに就かせる流れを作る、建設業を営んでいない関連会社も含めて役員人事の流動が検討できる、中小企業においては社長から従業員への事業承継が場合によっては可能になる、さらに非建設業者による建設業者のM&Aもハードルが下がる等、様々な可能性が見込まれます。

冒頭で提示した疑問点、なぜ「経営業務の管理責任者に関する規制の合理化」の関心度が高いのかという論点に戻りますが、これは経営業務の管理責任者の確保に苦労する企業が非常に多いからです。建設業に特化した行政書士事務所 オータ事務所に寄せられる、ご相談内容でも間違いなくTOP3に入ります。こうしたクライアントの悩みを解決するために経営業務の管理責任者の要件を満たす候補者が現時点でいるかどうか確認し、いない場合は要件をクリアするための提案を行うサービスをご用意しております。また、経営業務の管理責任者に限らず建設業許可や建設業法に関する相談会も定期的に実施しています。サービスに関するご質問、相談会のお申込みはお問合せフォームよりご連絡ください。私が当事務所のノウハウを活かして、解決策をご提示いたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA