建設業に特化した東京(新宿区)の行政書士事務所 オータ事務所でコンサルタントの一員として、クライアントから寄せられる建設業法や建設業許可、そして経営事項審査等に関する相談対応を行っている大森です。
先日2020年2月14日(金)、当社グループの一般社団法人建設産業活性化センター主催のセミナー『経営事項審査(経審)攻略セミナー』でも取り上げた経営事項審査の改正のうち、技術職員数(Z1)の改正について2020年4月1日施行に向けて建設業法施行規則の一部を改正する省令案のパブリックコメントが開始されました。
技術的能力については、主任技術者、監理技術者、登録基幹技能者講習を修了した者の数が評価の対象とされていますが、技能者については高度な技能を持つ者を有している場合であっても特段評価の対象とはされていません。建設工事に従事する技能者は、建設工事の適正な施工に大きな割合を果たしていて、人口減少下においても建設業者が地域で持続的に活動し、将来においても適正な施工を確保するためには、技能者を適切に評価し、適正な賃金を受け取ることができる環境を整えることが必要であると考えられています。この点、2019年4月より本運用が開始された建設キャリアアップシステム(CCUS)にもとづく建設技能者の能力評価制度におけるレベル評価システムが、2020年4月1日から本格的に実施されることとなり、高度な技能を有する技能者を雇用する企業は技術力があると評価できることとなります。能力評価制度は、レベル1からレベル4の4段階でレベルごとのカードが付与されますが、うちレベル4およびレベル3の者の数について経営事項審査において加点評価することとなります。では、改正案の概要を確認しましょう。
①建設業法施行規則の一部改正(規則第18条の3関係)
現在、経営事項審査の技術的能力において登録基幹技能者が評価の対象となっていて、建設キャリアアップシステムに基づく能力評価制度において登録基幹技能者はレベル4相当とされていることから、「登録基幹技能者講習を修了した者に準ずる者として国土交通大臣が定める者の数」が評価の対象として追加されます。
②「建設業法施行規則第18条の3第3項第二号二の登録基幹技能者講習を修了した者に準ずる者を定める件」(新設)
①において「登録基幹技能者講習を修了した者に準ずる者として国土交通大臣が定める者」の内容について、能力評価制度においてレベル4と判定された技能者およびレベル3と評価された技能者を位置付けます。
③「建設業法第27条の23第3項の経営事項審査の項目及び基準を定める件」(平成20年国土交通省告示第85号)の一部改正
同告示の第一の三の1(三)の区分にレベル4技能者を、(四)の区分にレベル3技能者を追加します。
④経営事項審査の事務取扱いについて(通知)(平成20年国総建第269号)の一部改正
・経営事項審査における審査項目の「技術力」について、評価対象とする技術職員にレベル4技能者及びレベル3技能者を追加し、技術職員数値の算出にあたっては、それぞれの数に3及び2を乗じることとします。
・技術職員数値の算出における、レベル4技能者及びレベル3技能者の技能の区分については、下の表の左に掲げる能力判定基準ごとに、それぞれ同表の右に掲げる建設業の種類のいずれかに計上するものとします。
電気工事技能者能力評価基準 | 電気、電気通信 |
橋梁技能者能力評価基準 | とび・土工、鋼構造物 |
造園技能者能力評価基準 | 造園 |
コンクリート圧送技能者能力評価基準 | とび・土工 |
防水施行技能者能力評価基準 | 防水 |
トンネル技能者能力評価基準 | とび・土工、土木 |
建設塗装技能者能力評価基準 | 塗装 |
左官技能者能力評価基準 | 左官 |
機械土工技能者能力評価基準 | とび・土工、土木 |
海上起重技能者能力評価基準 | しゅんせつ、土木 |
PC技能者能力評価基準 | とび・土工、鉄筋、土木 |
鉄筋技能者能力評価基準 | 鉄筋 |
圧接技能者能力評価基準 | 鉄筋 |
型枠技能者能力評価基準 | 大工 |
配管技能者能力評価基準 | 管 |
とび技能者能力評価基準 | とび・土工 |
切断穿孔技能者能力評価基準 | とび・土工 |
内装仕上技能者能力評価基準 | 内装仕上 |
サッシ・カーテンウォ-ル技能者能力評価基準 | 建具 |
エクステリア技能者能力評価基準 | とび・土工、石、タイル・れんが・ブロック |
建築板金技能者能力評価基準 | 屋根、鈑金 |
外壁仕上技能者能力評価基準 | 左官、塗装、防水 |
ダクト技能者能力評価基準 | 管 |
保温保冷技能者能力評価基準 | 熱絶縁 |
グラウト技能者能力評価基準 | とび・土工 |
冷凍空調技能者能力評価基準 | 管 |
運動施設技能者能力評価基準 | とび・土工、造園、塗装、土木 |
基礎工技能者能力評価基準 | とび・土工 |
タイル張り技能者能力評価基準 | タイル・れんが・ブロック |
標識・路面標示技能者能力評価基準 | とび・土工、塗装 |
消防施設技能者能力評価基準 | 消防施設 |
建築大工技能者能力評価基準 | 大工 |
硝子工事技能者能力評価基準 | ガラス |
ALC技能者能力評価基準 | タイル・れんが・ブロック |
土工技能者能力評価基準 | とび・土工 |
・認定能力評価基準により技能や経験を評価された技能者を技術職員名簿に記載する際は、「有資格区分コード」の欄に次のコードを記載することとなります。
レベル3技能者=703 レベル4技能者=704
これらを要約すると、技術職員数(Z1)の評価について能力評価基準レベル4の者に3点、レベル3の者に2点が付与されることとなります。2020年4月1日以降に経営事項審査の申請を行う建設業者、とりわけ技能者を雇用している建設業者は既にレベル4のカードが付与されている方もいるかと思いますが、技能者のレベルについても情報を整理して技術職員数評価アップを行うようにしましょう。
さて、私がコンサルタントとして毎月実施しております経営事項審査の相談会日程が2020年2月は21日(金)と開催が迫っております。「行政には直接聞きにくい・・・」「継続的にコンサルティングを受けたい」といった方々に毎月お申込みをいただいております。3月決算の企業もそろそろ、次回の経営事項審査の準備について検討に入る時期かと思いますので、ぜひこの機会にご利用ください。皆さまのお申込みをお待ちしております。お申込みは当社のホームページ相談会申込よりいただけます。