建設業法施行令の改正で見えた「特定専門工事」とは?

建設業に特化した東京(新宿区)の行政書士事務所オータ事務所 でコンサルタントの一員として、クライアントから寄せられる建設業法や建設業許可に関する相談対応を行っている清水です。

2020年5月20日(水)、建設業法改正にともなう建設業法施行令の一部を改正する政令が公布されました。2020年10月1日に施行となる改正建設業法では、一定の条件のもと下請負人が置くべき主任技術者の配置を不要とする特定専門工事一括管理施工制度が創設され、今般の建設業法施行令の改正によって特定専門工事の内容が明らかになりました。本制度は、技能者を抱えない元請負人にとっては自社施工分を超える業務量に対応しやすくなり、技術者が不足する下請負人にとっては受注の機会を確保しやすくなり、生産性向上にもつながる画期的な制度ですが、制度利用にあたっては建設業法違反とならないよう注意すべき規定も多くありますので、その内容をしっかり理解しておきましょう。

特定専門工事一括管理施工制度
特定専門工事の元請負人と下請負人は、その合意により、元請負人が自ら工事現場に置く主任技術者が、その行うべき技術上の施工管理と併せて、本来であれば下請負人の主任技術者が行うべき技術上の施工管理を行うこととしたときは、下請負人は当該工事現場に主任技術者を置くことを要しないこととする制度。
(改正建設業法第26条の3)

「特定専門工事」とは?
・土木一式工事または建築一式工事以外の建設工事
・施工技術が画一的であり、かつ、施工の技術上の管理の効率化を図る必要があるものとして政令で定めるもの
・元請負人が締結した下請契約の請負代金の額(の合計額)が政令で定める金額未満
・元請負人が発注者から直接請負った場合は、下請契約の請負代金の額が4,000万円未満

建設業法施行令の改正内容(建設業法施行令第30条関係)
・大工工事又はとび・土工・コンクリート工事のうち、コンクリートの打設に用いる型枠の組立てに関する工事
・鉄筋工事
・特定専門工事の対象となる建設工事の下請代金の合計額は、3,500万円未満

特定専門工事=下請代金の合計額が3,500万円未満の「鉄筋工事」及び「型枠工事」

制度利用の条件等
・元下間で書面による合意を行う(工事内容、主任技術者氏名、その他省令で定める事項を記載)
・合意前にあらかじめ元請負人が注文者の書面による承諾を得る
・元請負人の主任技術者は、特定専門工事と同一種類の建設工事に関し1年以上の指導監督的実務経験が必要
・元請負人の主任技術者は、工事現場に専任で置かれている
・主任技術者を置かないこととした下請負人による再下請負が禁止

下請負人が再下請負禁止の規定に違反した場合は、監督処分事由に該当

元下間の合意書面の内容
・特定専門工事の内容
・特定専門工事の下請契約の請負代金額の額
・他に特定専門工事に該当する下請契約があるときは、それらの請負代金の額の総額
・元請負人が置く主任技術者の氏名及び有する資格
(合意書面の添付書類)
・1年以上の指導監督的実務経験を有することを証する書面
・主任技術者を専任で設置する旨の元請負人の誓約書
※元下間の合意書面の内容及び添付書類は省令(建設業法施行規則)の改正案のパブリックコメント実施中

Q.元請業者―1次下請間や2次下請―3次下請間で本制度の利用は可能か?
A.改正建設業法において本制度を規定する法第26条の3では、あくまでも特定専門工事の元請負人と下請負人としてるため、建設業者間での下請契約であれば制度利用が可能で、次数の制限はありません。

Q.注文者から特定専門工事と異なる工種で請負った元請負人が下請負人との間で制度利用することは可能か?
A.可能と考えられます。特定専門工事はあくまでも元下間の請負契約の工事内容であるためです。しかしながら、特定専門工事と異なる建設工事の種類で配置された元請負人の主任技術者は、特定専門工事の資格を有し、さらに特定専門工事について1年以上の指導監督的実務経験を有する必要があります。

いよいよ特定専門工事の対象も決定しましたがその対象が型枠工事及び鉄筋工事であるため、元請業者の立場で直接制度利用することは少ないかと思われます。しかしながら、元請業者とりわけ特定建設業者には下請業者の法令遵守指導も求められますので、本制度の十分な理解と書面による確認が求められます。

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シニアコンサルタント 清水 茜作

行政書士有資格者
2012年 オータ事務所株式会社 入社
入社よりオータ事務所営業部で建設業許可の各種申請、経営事項審査などに携わり、17年は年間約450社の手続きを担当する。培ったノウハウをもとに18年より同社の広報担当としても、建設業者に向けた最新情報の発信を行っている。また、グループの建設産業活性化センターが主催するセミナーでは、コンテンツ制作や講演を通して建設業者のコンプライアンス・経営力向上を積極的に働きかけている。

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